そうだ、僕らはくらしの プラットフォームを作りたかったんだ。

取材から2年、あれからどうですか?|徳島県神山町「天然染料の染めもん屋・染昌」

取材から2年、あれからどうですか?|徳島県神山町「天然染料の染めもん屋・染昌」

築80年の古民家。カラリ、と音を立てながら網戸が開き、家の中から天然染料の染めもん屋「染昌」の瀧本昌平さんが出てくる。

「おぉ佐野さん、久しぶりやなぁ!」と笑いかける彼の腕の中では、1歳半になる息子・一楽(ひらく)くんが笑っていた。

「お久しぶりです。……とてもかわいい息子さんですね」と少し泣きそうになる私。前に取材で訪れたときは、まだお腹のなかにいたのに。2年という時の経過を、徳島県神山町の瀧本さんの庭で噛みしめる。

2014年の暮れに初めて取材で訪れたこの庭。ITの町として注目を浴びた、神山町。メディアに注目される「サテライトオフィス」「アーティスト・イン・レジデンス」はもちろんだけど、「どんなひとが暮らしているのか?」がもっとずっと知りたくて、編集部のタクロコマと訪れたあの日。

2016年の夏の終わりに、以前初めて会ったその場所で、「その後、どうですか?」と立ち話に花を咲かせる。

DSC_7257 (1)

2014年当時の取材時の写真

somesho-8-15

瀧本昌平さん:

天然染料の染めもん屋「染昌(そめしょう)」を営む。1982年生まれ。京都の染工房で修業したのち、地元徳島県で独立。幼少時の楽しい思い出から神山町へと導かれ、染めもんを生業としながら稲作や畑仕事をして暮らす。妻と、2015年3月に生まれた第一子・一楽(ひらく)との3人家族。2014年暮れに『灯台もと暮らし』の取材を受けた。

お元気ですか。

佐野知美(以下、佐野) たっきーさん、こんにちは。

瀧本昌平(以下、たっきー) こんにちは。

佐野 あの、ちょっといいですか。ずっと気になっていたことなんですけれど。

たっきー うん?

佐野 あれから、どうですか?

たっきー 佐野さんに、取材を受けてから。

佐野 そう。

たっきー 2010年に夫婦で移住をして、2014年暮れに「灯台もと暮らし」の取材を受けた。

somesho1

2年前に取材で訪れたとき、季節は冬だった

佐野 そして2015年春に第一子が産まれて、暮らしも仕事も少しずつ変わってきた?

たっきー よく知っているなぁ。

佐野 それくらいです。

たっきー あの頃は、子どもの自主保育をしたいと言っていた。

佐野 それを、ついに始められたのでしょうか?

たっきー うん。地域のひとたちが協力して、集まって、一緒に子育てをするようになった。

佐野 すごいことですね。

たっきー それくらい、神山町に同世代の移住者が増えたってことやな。

発酵を続ける神山町。

somesho-15-15

2015年7月にオープンした宿泊滞在施設「WEEK神山」。「神山バレー・サテライトオフィス・コンプレックス」に隣接

佐野 道すがら、思い出の場所を通ってきました。

「えんがわオフィス」の隅田徹さんが経営する、宿泊滞在施設「WEEK神山」。アートディレクター・デザイナーの廣瀬圭治さんが手掛ける「神山しずくプロジェクト」の準備中の実店舗。

2012年に移住された植田彰弘さんは、2015年から地域おこし協力隊として「NPO法人里山みらい」の仕事をされるようになったし、町やひとの変化を見るのはなんだか感慨深いです。

たっきー 今度、うちの隣に地域のコミュニティスペースもできる予定なんよ。

佐野 へぇ。来る時、建設途中の建物を見かけたので、何だろう? と思っていました。

たっきー 若いひとが活動をしやすいように、と元役場の方が個人で建ててくれるんよな。期間限定で「染昌」も展示販売をしたり、ちょっとしたカフェ運営みたいなことができたらなと思っとる。

佐野 いいですね。まさにグリーンバレー理事長の大南信也さんの言う「町が発酵する段階」でしょうか。広岡早紀子さんも、元気にしているかな……。

「染昌」の話。

somesho-4-15

たっきーさんと、愛犬の「しげ」

佐野 天然染料の染めもん屋「染昌」の仕事は、その後どうですか?

たっきー 忙しくなったなぁ。

佐野 ものすごくいいことですね。

たっきー 藍や柿渋、柘榴(ざくろ)や茜などで染める草木染めに魅力を感じる若い人が、前より増えたかもしれん。そういえばな、別注の話をもらうことも増えたんよ。

佐野 別注?

たっきー オーダーメイドの暖簾や割烹着を、特別につくってほしいという依頼。一度商品を買うてくれたひとからの問い合わせや、知り合いを通じての注文がこの数年で多くなった。

somesho-14-15

たっきーさんの自宅の様子。別注品の暖簾見本や、一楽くんのために特別に染め上げた手づくりのこいのぼりが並ぶ

たっきー 天然染料や、麻、絹、木綿などの天然繊維にこだわって自然体に染め上げる「染昌」の仕事の基本は、手作業。

染め物の色や風合い、商品自体の持つ力は、対面以外ではよう伝えられん。だからずっと、直販が自然だと思ってやってきたんよな。

でも、経営の勉強をしたことがあるわけでもないし、これでいいのかという不安な気持ちも正直あった。手探りだったけど、自分を信じて続けてきてよかったと思うわ。

佐野 うんうん。私までうれしいです。

たっきー あとは、「べび昌」を始めたのも大きな変化やな。

佐野 息子の一楽くんを授かったことがきっかけで生まれた、「染昌」のベビーライン。

somesho-12-15

息子の瀧本一楽くん。身に着けているのはラオス在住の友人と共同制作している「べび昌」の「天晴れ着」。手紬ぎ、手織り、手染め、手縫いにこだわる

たっきー 子を持つ母親や、孫のいるおばあちゃんなど、客層も増えてきた。あとは、染め物の色が暖色系になった。

佐野 暖色系に。

たっきー 出店して商品を並べるとよく分かるんやけど、前は茶色やカーキなど渋い色が多かったのが、ピンクや黄色、オレンジとか、暖色系がめちゃくちゃ増えた。

「たっきー今こんな気分なんやなー」って、展示を見たら一瞬で分かるで(笑)。無意識やったんやけどな。

佐野 パパなんですねぇ……(笑)。

手仕事を継ぐ。

somesho-3-15

同じく神山町で暮らす友人・定岡俊祐(さだ)さんと、たっきーさん。家族ぐるみで仲が良いという。取材中に偶然訪れてくれた

たっきー そういえばな、友だちの「さだ」の息子が大きくなって、最近染め物の手伝いをしてくれるようになったんよ。

佐野 へぇ。

たっきー 何度もワークショップに参加してるうちに、仕事の手順を覚えて手伝ってくれるようになった。

佐野 弟子のように。

たっきー そう。

佐野 素敵。

たっきー おもしろいよな。息子の一楽もいつか手伝ってくれたらありがたいなとは思うけど、強制はしたくない。同じ職人でも、大工になりたいと言うかもしれんし、シェフかもしれんし、全然別の仕事かもしれん。

なんでも好きなことを選んでほしい。そのための背中は、たくさん見せてやりたいし、この町にはそのお手本がいっぱいいる気はしている。

佐野 うん、そうですね。神山町には素敵なひとがたくさん暮らしています。

次に会うときには、みんな何をしているんだろう。またたっきーさんや一楽くんに、会いに来たいです。私も染め物、手伝ってみたい。

somesho-7-15

somesho-9-15

somesho-10-15

somesho-13-15

somesho-5-15

somesho-8-15

somesho-1-15

somesho-2-15

somesho-11-15

th_DSC_8643 (1)

おまけ:2014年の取材時の様子。同じ場所だけれど、暮らすひとはやっぱり少しずつ、変わっていく

天然染料の染めもん屋「染昌-そめしょう-」
616825_472866922750937_30029376_o (1)

藍や柿渋の他、様々な草木を使って染める染めもん屋。天然染料と、麻、絹、木綿などの天然繊維にこだわって自然の色目を大切に、自然体に染め上げている。

灯台もと暮らし【徳島県神山町】特集はこちら

writer:
灯台もと暮らし
灯台もと暮らし
これからの暮らしを考えるウェブメディアです。人、モノ、仕事、地域、食などを軸に、暮らしを見つめなおすための情報を発信しています。

website facebook twitter