そうだ、僕らはくらしの プラットフォームを作りたかったんだ。

【贈り物】”暮らし”も世界に1つのベビー服も、すべてまとめて「子どもへの贈り物」|天然染料の染めもん屋・染昌

【贈り物】”暮らし”も世界に1つのベビー服も、すべてまとめて「子どもへの贈り物」|天然染料の染めもん屋・染昌

徳島駅から車を走らせること1時間。だんだんと緑が増え、建物が減ってゆく。徳島県神山町には杉が多い。「ここ、私知っている」と思わず笑みがこぼれてしまう。景色も空気も、水の美しさも空の青さも、2年前と何も変わっていなかった。

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変わったことといえば、あの頃「もうすぐ子どもが産まれるの」と笑っていた、天然染料の染めもん屋「染昌」の瀧本さん夫妻に子どもが産まれたこと。

ずっと会いたいと思っていた。「贈り物」をテーマに記事を書くと決めたとき、私の脳裏に一番最初に浮かんだ家族。

徳島県神山町は、『灯台もと暮らし』の一番最初の地域特集の場所だった。あの時、「メディアの価値観を体現している」と心震わされたひとたちに、時を超えてもう一度会いに行こう。

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瀧本えみさん

天然染料の染めもん屋「染昌(そめしょう)」を営む瀧本昌平さんの妻。1984年生まれ、富山県出身。2010年、夫の出身地である徳島県に移住。2015年3月1日に第一子・一楽(ひらく)を出産。2014年暮れに『灯台もと暮らし』の取材を受けた。

お金では買えない“物々交換”という豊かさを知る

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── えみさん、お久しぶりです。お元気でしたか?

瀧本えみ(以下、えみ) 元気やよ。佐野さんも、相変わらずお元気そうで。

── ふふ。今日は、贈り物について聞いてみたいなと思っておじゃましました。突然ですが、普段、贈り物ってされますか?

瀧本えみ(以下、えみ) 急な質問やね(笑)。うーん、どうやろう。でも、するよ。そのひとのことを思い出しながら、選んだり、探したり。

最近だと、お義母さんの誕生日に天然石のネックレスをプレゼントした。同じ神山町内で暮らしている友人・さだがアクセサリー作家をしていてね。

彼に相談して、お義母さん自身が選んだ石をネックレスに編んでもらった。

── さださんは、以前取材させていただいたことがあるので、私も大ファンです。ちなみに、その時は何の石を?

えみ 紫色がきれいな、アメジスト。お義母さんへ、と思ってプレゼントしたんだけど、じつはアメジストはお義父さんの誕生石だったみたいで。「2人で代わりばんこに身に着けている」って、この間楽しそうに報告してくれた。

── 友だちの作品をプレゼントに選ぶって、なんだかいいですね。

えみ さだは、代金のかわりに「染昌」の染め物から気に入ったものを選んで、彼のお母さんにプレゼントしたんよ。

── お金で買うのではなく、物々交換。

えみ 手に職があるって、こういう時も楽しいよね。しょうくん(夫)は時折、子どもが産まれた夫婦に、子どもの名前入りのてぬぐいをつくって、その子をイメージした色に染めてプレゼントしたりしてる。

贈り物って、やっぱり気持ちを贈るものなんかなぁって思うよね。

すっと心に染み込んできた「ひらく」の響き

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── 以前お会いした時は、えみさんは妊娠7ヶ月でした。

えみ あのあと、2015年3月1日に第一子・一楽(ひらく)を出産したんよ。子どものいる毎日は、すごく楽しい。

── 尊敬するひとに「ヒラク」という名のひとがいるので、なかなかの衝撃でした。素敵な名前ですね。

えみ ふふ、名前はね、しょうくんがつけたの。産まれた日に彼が私の実家に来てくれて、家族と祝杯を上げている時に、私のお父さんが「あぁ、今日は“開く”の日やな」って。

── “開く”の日?

えみ 日々の吉兆を見る「十二直(じゅうにちょく)」で見ると“開く”の日があるんよ。大安や吉日などの「六曜」は有名だけど、昔は「十二直」の方が重視されていたみたい。運気を切り開くという意味の“開く”のほか、定(さだん)、満(みつ)などがあってね。

息子が産まれた3月1日はちょうど“開く”の日。しょうくんは父の発言がなぜか心にすっと入ってきたみたいで、「この子の名前は、ひらくや!」って。

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えみさんの自宅にて。夫の瀧本昌平さん(写真中央)と、友人のさださん(写真左)と一楽くんと一緒に

── へぇ……! そういうことってあるんですね。

えみ お腹にいるときは全然違う名前を考えていたから少し驚いたけれど、一晩2人で考えて、私も「ひらくやな」って。3月1日だし、第一子だし、その日は旧暦の1月11日。1に縁のある子だなって思ったのと、「一」は「ひ」とも読むよね、って、漢字を決めていった。

楽しみながら、未来を切り開ける子に。名前も、広い意味で言えば親から子への贈り物のひとつかもしれないね。

ラオスと日本の融合が生む、天然の草木染めの産着「べび昌」

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「染昌」の新ライン「べび昌」の人気商品「天晴れ着(あっぱれぎ)」。青色は本藍で、赤色は茜で染めている

── 「染昌」の新ラインである「べび昌」は、一楽くんがきっかけで生まれたブランドなんですよね。前に取材させていただいた時に、「今後は子ども服も考えている」と聞いていたので、実現している様子を見て少し感動しました。

えみ 前に佐野さんが取材に来た時には、すでにしょうくんは、たくさん試作品をつくっていたもんね。あの後も、子ども服を染めては家中に飾って、大変だったんよ(笑)。

商品にして初めて世の中に出したのは、2015年春のオーガニックマーケットだったかな。「べび昌」の「天晴れ着(あっぱれぎ)」は、手紡ぎ、手織り、手染め、手縫いと一貫した手仕事にこだわっているから、大量生産はしていない。

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── うんうん、いいですね。

えみ 「天晴れ着」は、天の恵みから生まれる晴れ着、の意。ラオスの伝統工芸が息づく村で暮らしている友人がつくる「pray to nam」との、共同作品です。

自然豊かな山の中でコットンを育てて、糸を紡いで、生地をつくる。そういった文化が東南アジアのいくつかの山岳民族にはまだ残っているんだって。彼らがつくった生地をフェアトレードで輸入して、天然染料で染めて、「pray to nam」のデザインを、彼の祖母が足踏みのミシンと手縫いで仕立てていく。衣類のほかに帽子もつくっていて、それは私が縫ったりもするよ。

「染昌」のモットーは、藍や柿渋、茜や柘榴(ざくろ)など、様々な天然の草木を用いて、肌と環境にやさしい昔ながらの染めの技術を体現すること。たとえば藍なら、藍を家の畑で育てて、染料や食用として使う。藍の葉っぱを発酵させたものと木を燃やした灰から得られる灰汁や、小麦の皮などを一緒に混ぜて、さらに発酵させた液で染めて、使用後はまた畑に蒔いて、肥料として再利用したりもする。

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えみさんの自宅裏で栽培されている、藍の若い葉っぱ

── 藍染めが自然の循環に沿ったものだということを、私は染昌さんに出会って初めて知りました。

えみ 昔の仕事は、本当に自然の循環に沿っていて、すごいよね。徳島は昔から藍栽培と藍染めが盛んだったから、しょうくんはそれをこの土地で再現したいと思って、徳島にUターンして来たんよね。

天然の草木染めは肌にやさしく、藍は防虫・殺菌効果があったり、肌荒れ、冷え性を防いでくれたりする。大人はもちろんだけど、こういった質の良いものは子どもにこそ身につけさせてあげたいって、私も親として思います。

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藍を収穫したら乾燥させて、染料やお茶にする

えみ こうした想いやつくり手の顔を知ってほしいから、染昌の販売のメインは、イベント出店や催事などの直販。初孫への贈り物としてとか、今度産まれる姪っ子のためにとか、身の回りの新しい生命の誕生に向けて、贈り物として買ってくださる方が多いのは、本当にありがたい。

手づくりだから大量生産はできないけど、世界に数着の特別な肌着。それを、産まれてから一番最初に触れる産着として、当たり前のように身につけられる子どもが増えたら、きっと幸せが世の中に増えるんじゃないかなって思っています。

「ここでの暮らし」という贈り物を、次世代へ紡いでいく

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天然の草木染めも自給自足の暮らしも、一楽くんにとっては当たり前の光景

── そういえば、今年の阿波踊りはどうでしたか?

えみ 最高に楽しかった! やりきった〜……! あ、今年はね、一楽も一緒に踊ったんよ。

── まだ1歳半なのに!(笑)

えみ そう(笑)。誰も教えていないのに阿波踊りを踊ったり、藍の葉を庭でちぎっていたら、見よう見まねでちぎってみたり。薪仕事をすれば一緒に薪を割りたがるし、染め物をするときは布を藍に浸してみたがるし、実際にそれをやってみたりする。私たちの暮らしや仕事を、子どもなりにきっと見ているんやね。

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豊かな自然で自由に遊ぶ一楽くん。彼の肌着は特別に柘榴と茜で重ね染めしたそう

えみ まだ言葉は十分に話せないけれど、私たちの言っていることはもう理解しているみたいで意思疎通はできるし、子どもって本当におもしろい。

── 都会暮らしをしていた瀧本さん夫妻が、移住をして叶えたかった今の暮らし。一楽くんには今度「当たり前の日常」として映っていくのだなと思うと、なんだか不思議な気持ちになります。

えみ どんな大人になるんやろう。楽しみやな。一楽が産まれてから、意識も暮らしも、仕事も少しずつ変わってきた。オーダーメイドの話もぐっと増えたし、子どもってやっぱり何か特別な力を持っていたりするんかなぁ。

子育てって、一見自分が「与えている」ような気がするけれど、本当はたくさん「与えられている」のかもしれないと感じる時も多いんよ。イライラすることももちろんあるけど、一楽の笑顔を見ると、何でもいいかって思っちゃう。

暮らしも贈り物も、循環の輪ができたらすごく幸せなのかもしれないね。

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天然染料の染めもん屋「染昌-そめしょう-」

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藍や柿渋の他、様々な草木を使って染める染めもん屋。天然染料と、麻、絹、木綿などの天然繊維にこだわって自然の色目を大切に、自然体に染め上げている。

灯台もと暮らし【徳島県神山町】特集はこちら

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